リード!リード!!このちっぽけな小片に我々サックス奏者がどれほど翻弄されているか!

リードの原料となるケイン(ケーン/CANE)とは、藤やシュロ、竹などの茎が硬質になる植物の総称で、クラリネットやサックスのそれは主にフランスやアルゼンチン、スペインなどに自生する葦の一種です。 南フランス産が何といっても有名ですが、有名だといって常に質が良いかというと、これがそうでもない。総じて昔(というのがいつ頃なのかは意見の分かれるところですが)より質が落ちているのではないか、というのはよく聞く話です。

あまり鳴りのよくない、あるいはそもそも音が出にくいものを「ハズレ」と言ったりしますが、そんなクジ引きじゃあるまいし、ハズレといわれてもそれも一枚、これもイチマイ。メーカーにもよるけれど(みみちいハナシで恐縮ですが)一枚あたり200~300円、バリトンなんてアナタ、い、い、い、一枚で800円もするのですよ!「ハズレです」なんて気軽に言わないでもらいたい(言ってないか)。

繊維の太さなどと関係があるのか、アルトよりテナーの方がハズレ率が高いように思うのですが、どうでしょう?完全に個人の感覚ですが。

ぼくはある時、テナーのリードが4箱続けてハズレたことがあります。ひと箱5枚なので20枚、値段にして(度々みみちいハナシですが)12,000円ほどですか。これがマッタク使い物にならないのだから泣くに泣けません。普通の商品、例えばキャベツや大根やらを買って、半分が傷んでて使えなかったとなれば、これはクレームの対象になると思います。交換にも応じてくれるでしょう。しかし、ことリードに関しては泣き寝入りしかない。理不尽です。

で、どうにもハラの虫が収まらないので、これを機にテナーとバリトンに関しては天然リードを買うのをやめました。ではどうするのか?樹脂製リードに切り替えたのですね。

普通はコレと決めたマウスピースがあって、それに合うリードをあれこれと探すわけですが、その逆です。まず「このリードを使う」という前提があって、そのリードに合うマウスピースを探したわけです。リードやマウスピースの種類が豊富な現代ならではのことですね。 

リードの質について嘆いている人は多く、人工素材のリードについても色々と意見が飛び交いますが「やはり『アタリ』の天然素材には及ばない」という点は概ね一致するようです。確かにそう思うし、ぼくもバリトンとテナーについては樹脂製ですが、アルトとソプラノに関しては相変わらず天然リードです。しかし、仮にサックスというものが発明された時からリードがプラスティックでできたものであったなら、みんなそれで良い音が出るように追求しただろうし、現にクラシックギターの弦やティンパニの皮なんかは、天然の(つまり動物の皮や腸)ものを目にすることは今や殆どないわけで、このあたりサックスは弦楽器や打楽器よりも保守的と言えるかもしれない。

というわけで、今テナーやバリトンに使っているのは「BARI」というアメリカのメーカーです。BARIというのはメーカー名なので、テナー用でもバリトン用でもバリ。ややこしいですが。

よく店頭で見かけるレジェールやフォレストーンと違って、ただの透明なプラスチック板をリードの形にしただけ、という愛想もクソもない見た目で、硬さの表記についても、一応SoftからHardまで5段階あるのですが、HardよりMediumの方が硬かったりして、よくわからない。テキトーにつけてるとしか思えない所があります。しかも同じ番手なのにかなり硬さに個体差がある。工業製品がこれでは困るのですが。

ただ耐久性は素晴らしい。これを言うと驚かれますが、十年以上も前のリードを今も使っていたりします。合うマウスピースがあればかなり使えます。

そして、これはあまり大きな声では言えませんが(といって別に悪いことをしているわけではないけど)テナーにバリトン用のBARIをつけています。これはさる高名なサックス奏者の方がやっていたのを真似てみたのですが、けっこう違和感なく使えます。テナーのリードをアルトに、というのもなかなか悪くない。古澤巌さんでしたか、ヴァイオリンにチェロの弓を使っておられる方がいましたが、それに似てますね。興味のある方、一度お試しあれ。

しかし愛用のBARIは、ついにこの辺り(大阪・神戸周辺)ではネットでしか手に入らなくなってしまった。以前は少ないとはいえ、少しは店頭にあったのになぁ・・・。 

ま、いっか。十年保つし。

担当講師紹介

泉 かずしげ

Kazushige Izumi

担当コース

大阪音楽大学器楽科サクソフォン専攻卒業。赤松二郎氏に師事。
アロージャズオーケストラではバリトンサックスを担当、北野タダオ氏、宗清洋氏らの薫陶を受ける。岩崎宏美、押尾コータロー、角松敏生、北村英治、木村充輝、ゴンチチ、日野皓正、松任谷由実、渡辺真知子他、内外のアーティストと共演する。
「古谷充ネイバーフッド・ビッグバンド」ではバリトンサックス、歌手大西ユカリのバックバンド「仁義なき小林バンド」にはテナーサックスで参加。

また歌い手としての顔も持ち、1992年結成のアカペラコーラスグループ「Be in Voices」ではリーダーを務め、レパートリーの大半の作/編曲を手がける。
ハワイ、フィリピン、中国、韓国など海外公演の他、幼稚園から高等学校まで全国での学校公演や、NHK教育テレビ「シャキーン!」でその歌声と演奏は子供たちにも浸透、映画/TVドラマ「妖怪人間ベム」の中では、のこぎり奏者のサキタハヂメと共にコーラスと演奏を担当する。
2014年8月に韓国で開催されたアカペラの祭典「Vocal Asia2014」には日本から唯一のゲストとして出演するなど、着実にファン層を広げている。

アローミュージックスクール代表。

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